このサイトに掲載した写真を撮影するために、いろいろなフィルムカメラとレンズを使用しました。これらの機材は、これまでに時間をかけて入手・使用・メンテナンスを経てきています。これらは最新のデジタルカメラを購入するように新品で入手することはできませんが、これからフィルムカメラをスタートされる方のご参考となるように、ここで代表的な組み合わせについてご紹介します。

 また、ここではカメラの規格として、フィルムサイズから35mm判と中判(又はブローニー判)が登場します。これらについて、以下に簡単に説明します。

35mm判: フィルムカメラ全盛時代において最も一般的なフィルムでした。画面サイズが24×36mmでパトローネに入ったもので最長36枚撮影ができます。ここでご紹介しますニコンFとニコンF6が35mm判カメラです。

中判: 35mm判よりも大きな幅6cmのフィルムです。縦横比の違いで、6×4.5、6×6、6×7、6×8、6×9などの規格のカメラがありました。「ありました」と言うのは現在新品で販売しているものがないからです。中古で購入するのみです。ここでご紹介しますハッセルブラードは6×6です。


中心的存在:ハッセルブラード500C/M+プラナーC80mmF2.8
Hasselblad 500C/M + Planar C80mm F2.8

 私の撮影の最も中心的な位置にあります。撮影枚数では35mm判のニコンの方が多いと思いますが、購入の際の選定、手探り状態の習熟過程、メンテナンスなどにかなり手間がかかり、思い入れの強い組み合わせです。

 このカメラ、中判(幅6cmのブローニーフィルムを使用)カメラとしてかつてプロが使用する代表的なカメラでした。電子制御ではなく完全な機械式カメラで、TTL自動測光などもありません。完全なマニュアル仕様で、シャッター速度と絞りを撮影のたびに設定します。また、もちろんオートフォーカスでもありませんので手動によるピント合わせが必要です。至って不便きわまりない代物なのですが、便利機能がない分、中判カメラとしては割と小型で頑丈な点が長所です。

 また、このカメラの特徴として、撮影した画面が正方形(スクエア)である点です。現在普通に使用されているデジタル一眼は3:2の横長(又は縦長)が一般的です。横長に慣れた目で使うと最初は少し違和感がありますが、慣れると縦・横を迷わない点、横の広がりと奥行きを同時に満足させる点、などの長所もあります。もちろん最初から横長(又は縦長)にトリミングすることを前提に撮影しても構いません。


粋な組み合わせ:ニコンF+サンパントリオ
ニコンFとサンパントリオ(左から、Micro Auto 55mm F3.5、Auto 135mm F3.5C、Auto 28mm F3.5C)
まずカメラから

 35mmフィルムカメラはニコマート、FM2、F3といろいろと使用してきましたが、このFを最後に購入しました。いわずと知れたニコンが世界に誇った名機、一眼レフの開祖で1959年発売であり、現在すでに60年以上が経過しています。何というカメラでしょう、まだ十分に現役です! Fはその後F2、F3、F4、F5と進化し今はF6が販売を継続しています。この初代Fを私としましては現在所有するマニュアルカメラの中では最後に購入(もちろん中古です)しました。実際に使用してみると、そのダイレクト感は他に代えがたいものがあることがすぐにわかりました。このサイトでの隅田川と京浜運河シリーズでは中心的に使用しました。

次にレンズです

 F3.5の明るさ(暗さと言った方がいいような)のレンズのことを「サンパン」と言うのだそうです。東京西大井にあるメンテナンスをお願いしている修理屋さんへ通っているうちに知りました。300mmF2.8の明るい望遠レンズことを「サンニッパ」と言いますが、これと同じノリですね(同じというよりサンパンの方がはるかに古い)。

 このサンパンなのですが、明るいレンズ(F1.4やF2など)が比較的安価に購入できるようになった現在では見向きもされない存在となりました。単焦点でF3.5なんて存在意義がありません。しかもレンズの設計が古いので解像力もそれほど期待できません。しかし、使い始めてみると意外と魅力的なのです。

 サンパンの魅力はその軽量と重量バランスにあります。レンズの口径が小さいので重心がマウント側(カメラボディ側)にあり、カメラに装着して構えた際のバランスが絶妙です。特に55mmF3.5の標準マクロレンズが顕著です。レンズ本来の性能(解像力・カラー再現性・逆光耐性など)については最新の設計のレンズがいいのは当然なのですが、ここのトリオのように古いレンズでも、工夫すればスキャナー読み取り後のレタッチの段階でかなりなところまで挽回できます。

組み合わせて使う

 このニコンFとサンパントリオを組み合わせて使います。カメラ側は露出計もなくフィルムも手巻き、レンズ側はオートフォーカスもなく手動ピント合わせ。便利機能は何もなく、すべて基本に立ち返った純粋なマニュアル操作。何とも粋ではありませんか! 昔ならば、この不便さ故に余程習熟していなければ不出来な写真を量産するところですが、今は撮影の失敗をデジタル化後のソフトウェアによるレタッチでかなりなところまで挽回できる。不出来な写真を量産しません。それどころか、余計なことに気を回さなくてすむので、被写体に集中できる・・・という利点があるのです。

実際の撮影スタイル

 実際の撮影スタイルを見てください。以下の写真のようにして使用しています。ボトムグリップとソフトシャッタレリーズを装着しています。ソフトシャッタレリーズは学生時代から使用しているもので購入してから45年以上経過しています。ボトムグリップは、Fの裏蓋が外れやすいので安心材料として使いはじめたものです。こうすると、機動性が格段に良くなります。


スーパーフィールドカメラ:ハッセルブラードSWC/M
Hasselblad SWC/M Biogon 38mm F4.5
このカメラの構造と特徴

 このカメラは上掲の写真のようにレンズがあるだけのような構造です。普通はフィルムマガジンを装着した状態で写真に撮られることが多くその場合はカメラ然としていますが、こうやってフィルムマガジンを外した状態でみますと何だか頼りありません。自立すらしません。レンズ本体のすぐ後方にフィルムマガジンが装着される、こういった単純な構造です。そのため露光は完全なマニュアルであるばかりでなく、ピント合わせもピント合致を確認するファインダーすらなく、目測によります。写真のボディ上部にあるのぞき窓みたいなものがファインダーですが、これは構図確認をするだけのものです。

 上述のとおり単純な構造なのですが、かなり特殊なカメラです。まず、焦点距離ですが中判6×6で38mmと超広角(対角線上の画角は90°)です。そして中版であるにも拘わらずフィルムマガジン込みでも35mm判一眼レフ程度の重量しかありません。

撮影の仕方

 このカメラで撮影する際に最も留意する点は、上に向けて(又は下に向けて)撮影すると構造物の歪みが大きく出てしまいます。そのため、極力水平に構える、というのが基本です。このことさえ気をつけていれば、このカメラ、その機動性(軽い)と中判フィルムということから、相当に感動的なシーンを自然界から切り撮ってくれます。

私の場合

 私の場合では、15年程前に上掲写真の本機を入手して以来、持ち出しやすいので頻繁に使用しました。超広角レンズ+中判フィルムということで、数々の感動的シーンを切り撮ってくれました。構造が単純なために故障もなく、15年間メンテナンスなしで使用し続けました。まさに私にとっての「スーパーフィールドカメラ」です。そのいくつかのシーンをこのサイトにも掲載しています。

 しかし、ここに来てついにシャッターが故障してしまいました(2020年5月)。予想外の出来事です。修理できるかどうか、この機種の製造時期は1977~1988年と古くあまり期待できません。現在思案中です。


逆光に強い組み合わせ:ニコンF6+ZF28mm,ZF35mm
ニコンF6 + Distagon 28mm F2 ZF、 Distagon 35mm F2 ZF

さて、最後はこの組み合わせしかありません。究極のフィルムカメラです。

まずレンズから

 まずレンズからです。カールツァイス銘のレンズ(設計はカールツァイス、製造はコシナ)が、ニコンFマウント用レンズとして35mmが2006年12月に、28mmが2007年10月にそれぞれ発売されました。ニコンでカールツァイスが使えるということで画期的な出来事でした。この2本、発売直後は高価でしたが、次第に中古が市場に出回るようになり求め易くなってきましたので、発売後5年程経過したところでこの2本を中古で購入しました。

 最初はF3で使用したのですが、使用してすぐに逆光に対して極めて良好な結果となることに気づきました。もともと、カメラで逆光はタブーであるという文化で育ちました。カメラの諸先輩から、一眼レフ以前の距離連動式フォーカルプレーンカメラ(ライカ!)などは画面に太陽を入れるとゴム引きのシャッター幕に太陽を結像してしまいピンホールが出来るので絶対にしないように、などとのアドバイスをもらい、無意識のうちにカメラを太陽に向ける事を避けるようになっていました。もちろん現在の一眼レフカメラではミラーがあるために上記のようなピンホールの心配はありませんが、ミラーアップして長時間露光する際には留意が必要です。

 また、日常使用しているニコンのレンズにしても、太陽を画面に入れて撮影すると盛大にゴーストが発生します。それが当たり前だと思っていたところ、上記2本のレンズを使用してみて、太陽を画面に入れても破綻しない、大してゴーストが発生しない、ということに気づき、時代が変わったのだと実感しました。

究極のフィルムカメラ ニコンF6

 現在、ニコンからF6を新品で販売しています。35mm一眼レフカメラとしては唯一の貴重な現行品です。このカメラ、ニコンのF一桁(フラッグシップ機)として最後のカメラとなりました。もちろん電子制御のカメラです。

 ニコンの一眼レフは、代々内面反射の処理が工夫されてきています。最後の機種のF6は、フィルムカメラとしては最良のものということになります。このF6を中古(新品はかなり高価です。ニコンさんごめんなさい)で購入して現在使用しています。

両者を組み合わせて使っています

 上記のように、逆光耐性のよいZFレンズと内面反射処理が十分なF6を組み合わせれば、さぞや逆光に強い組み合わせになるだろう、と容易に想像されます。実際にやってみて期待は裏切られませんでした。このサイトに掲載しました霞ヶ浦の「二つの太陽」と三浦海岸の「剱崎の太陽」及び「三浦海岸海水浴場の太陽」はこの組み合わせで撮影しました。


【掲載履歴】

2020年6月7日:「カメラとレンズ」初版を公開。